床暖房とこたつはどちらも冬の生活を快適にするうえで高い効果が期待できる暖房機器です。しかし、床暖房とこたつを併用すると効率よく暖房できる事はあまり知られていません。
2つを併用するという発想はあまりないかもしれませんが、じつは双方の特徴をうまく活用することで暖房効果を飛躍的に高めることができます。
今回は、床暖房とこたつの特徴を比較しながら解説していきます。また同時に、併用すると得られるメリット・デメリットもご紹介します。
床暖房とこたつの比較
床暖房とこたつを5つの項目で比較してみました。その比較結果が下記となります。
床暖房 | こたつ | |
導入コスト | × | ◎ |
ランニングコスト | △ | ◎ |
温まるスピード | △ | ◯ |
部屋全体の温もり | ◎ | × |
耐久性 | ◯ | ◯ |
単純に項目だけを見ると、一見こたつの方が優れているように見えます。ですが、それだけでは本当の良し悪しはわかりません。
それぞれの項目がどうしてこのような結果になったのかを、もっと掘り下げてご紹介します。
導入コスト
床暖房の導入コストは種類や施工方法によって大きく異なります。床暖房の種類は大きく「温水式床暖房」と「電気式床暖房」があり、施工方法は「重ね張り」と「張り替え」があります。
ここでご紹介するのは、12畳の部屋に施工した場合の一般的な例になります。また温水式床暖房の場合は、温水をつくる熱源設備が必要になりますが、今回の導入コストには含んでおりません。熱源設備を加えると、もっと導入費用はアップします。
下記に、材料費、そして施工費を含めたおおよその導入コストをまとめました。
施工方法 | 温水式床暖房 | 電気式床暖房 |
張り替え | 85〜150万円 | 70〜130万円 |
重ね張り | 65〜100万円 | 50〜90万円 |
一方のこたつは、ご存知の通り家電量販店やホームセンター、ネット通販などで購入が可能で、電源を接続するだけでそのまま利用できるお手軽な暖房機器です。暖房機器としてだけでなく、シーズンオフでもテーブルとして利用できる点は、床暖房と異なるメリットになります。
こたつの導入コストは約1〜3万円程度。単身用であればさらに安くなる事もあります。
ランニングコスト
床暖房の種類は「温水式床暖房」と「電気式床暖房」ですが、これらのうち「温水式床暖房」の場合は温水をつくる熱源設備の違いでランニングコストが変わります。熱源設備は「電気」「ガス」「石油(灯油)」の3種類です。
ここで紹介するのは、12畳の部屋で8時間/日を30日間使用した場合をモデルとして算出した目安になります。また、床暖房の種類によっては省エネ設計を充実しているものもあり、以下よりも大幅なコストダウンを実現しているものもあります。
床暖房の種類 | ランニングコスト(月) |
電気温水式床暖房 | 約5,000円 |
ガス温水式床暖房 | 約7,500円 |
石油温水式床暖房 | 約6,000円 |
電気式床暖房 | 約8,500円 |
一方こたつの消費電力は非常に低く、1時間あたりの電気代は3~5円程度が目安になります。床暖房の算出モデルと条件を揃え8時間/日を30日間使用した場合のランニングコストは、約1,200円前後となります。
暖まるスピード
床暖房は起動して適温に達するまで一定程度の時間が必要になります。
この暖まるスピードが少し遅いという点が床暖房の弱点とも言えるでしょう。タイマー設定で早めに起動しておいたり、立ち上がりを他の暖房機器と併用したりするなどの検討も必要になるかもしれません。
こたつの場合、暖房する範囲は限られますが、密閉された狭い空間を暖めるため非常に早く暖めることが可能です。しかもこたつ布団は断熱効果が優れていることから、こたつ内の熱が外部に逃げていくことを抑制します。
部屋全体の温もり
床暖房は遠赤外線を利用した輻射によって暖房します。
輻射とは、ある熱を持った物体が電磁波を放出し、空間を移動して別の物質に到達することで熱を伝える方法です。床暖房から放出された電磁波が空間を移動し、人体や天井、壁などに到達すると熱に変換されます。
また、輻射は非常に遠い距離を移動できることも大きな特徴になります。つまり床暖房は、部屋全体を暖めるのに優れているのです。
一方こたつも輻射による暖房ですが、範囲は限定されます。
こたつは狭い密閉空間であり、輻射熱は人体やこたつ布団に到達した時点で熱に変換されます。つまりこたつの外部を暖める効果はないということです。しかも、床一面に敷き込まれた床暖房と比較しても、こたつの発熱体は非常に小さく、暖房効果は限られた範囲にとどまります。
こたつは部屋全体を暖める効果はなく、こたつ内部だけに限定されます。
耐久性
床暖房は他の暖房機器と比較しても耐久性に優れます。耐用年数が30年以上と、導入後は基本的にメンテナンスの必要はありません。
こたつの耐用年数は、一般的に10年程度とされています。ただし、導入コストがそれほど高いというわけではないため、寿命がきたら交換するといった対応でよいでしょう。
床暖房とこたつを併用するメリット
結論として、床暖房とこたつの併用は、うまく使うと大きな効果を発揮するため「あり」です。
床暖房の弱点は立ち上がりのスピードにありますが、このタイミングをこたつで補うことが可能です。床暖房は部屋全体を暖められるため、適温に到達したらこたつのスイッチを切っても快適温度を維持できます。
しかもこたつはストーブのように空気を汚染しないのがメリット。床暖房の立ち上がりに限定して、安全で暖房効果の高いこたつと併用することで暖房効率を高めることができるでしょう。
床暖房とこたつの効果的な併用方法
床暖房とこたつを効果的に併用するポイントは、以下の2点です。
- こたつのスイッチを切る
- カーペットやラグを敷かない
こたつのスイッチを切る
床暖房によって部屋の温度が上昇してきたら、こたつのスイッチは早めに切るとよいでしょう。
一定時間を経過するとこたつの暖房を利用するまでもなく、こたつ内部も床暖房の輻射効果によって十分に暖かくなっているはずです。併用するのはあくまでも床暖房の立ち上がり限定とし、その後は床暖房の輻射による暖房効果で部屋のどこに居ても快適に過ごせます。
またこたつ内部は、スイッチを切っても暖かい空間を維持できます。
カーペットやラグを敷かない
床暖房の運転中は、床面を塞ぐようなカーペットやラグを敷かないことが推奨されています。
というのも、カーペットやラグなどの敷物は断熱性を高めているものが多く、床暖房が放射する熱についても断熱してしまうため床面と敷物の間に熱がこもるのです。熱がこもると床材が変形したり敷物が破損したりする原因になり、また同時に輻射効果を薄め暖房効率が低下する恐れもあります。
したがってこたつと併用するにしてもカーペットやラグなどの敷物を敷かないことが重要です。もしどうしても敷きたい場合は、床暖房対応のものを敷くようにしましょう。
床暖房とこたつを併用することのデメリット
床暖房とこたつを併用することは暖房効率を高める意味でも有効です。一方でデメリットもあるため、その点では注意が必要になります。
床暖房とこたつを併用することのデメリットは、以下の2点です。
- 輻射効果が薄まる
- 固い床面に座る必要がある
輻射効果が薄まる
床暖房の輻射は、こたつ布団で覆われている部分は遮られ外部には届きません。
したがって、部屋全体で考えた場合の床暖房の輻射効果は、こたつ布団に覆われた分だけ薄まることになります。ただしこたつの内部は、スイッチを入れなくても床暖房の輻射の恩恵を十分に受けられるでしょう。
固い床面に座る必要がある
床暖房の運転中はカーペットやラグなど断熱性が高いものを敷くと周辺に悪影響を及ぼすため推奨されていません。ということは、固い床面に直接座る必要があるということです。
お尻がいたいときなどは床暖房対応のものを敷くとよいですが、暖房効率を考えると使用しないときは移動させるなど配慮も必要になるでしょう。
まとめ
それぞれを単体で比較した際、単純に項目だけを見るとこたつの指標が優れているように見えます。ですが、お互いメリット・デメリットがあるので、その点をしっかり着目した上でどっちを使うか選びましょう。
床暖房とこたつの併用は、使い方によっては効率のよい暖房効果が期待できる方法です。床暖房の立ち上がりに限定してこたつを併用することで、お互いの特徴をいかした暖房が実現できます。
例えば、床暖房の温度設定を低くしていても、こたつの狭い密閉空間ではスイッチを切っていても十分に暖かいでしょう。そうすることで省エネ効果も高まります。