【比較】床暖房とエアコンどっちを選ぶ?併用する際のポイントとは

冬の暖房機器の定番といえば「エアコン」。住宅にはもちろん、オフィスや宿泊施設、その他多くの施設で広く普及しています。

一方で「床暖房」は、注目度は高いながらも設置している住宅はまだそれほど多いというわけではありません。もしかすると、エアコンの他に自宅に床暖房を設置しようか迷っている人、または床暖房はエアコンの代わりの暖房器具になるのかわからず、床暖房の導入を躊躇っている人もいるかもしれません。

そこで本記事では、「床暖房」と「エアコン」の違いについて、6つの項目で徹底比較。また、併用して使うときの注意点などを合わせてご紹介します。

床暖房とエアコンの違いを6つの項目で徹底比較

エアコン

床暖房とエアコンの違いについて、以下の6項目で比較します。

  1. 熱を伝える方法の違い
  2. 暖まるスピードの違い
  3. 初期コストの違い
  4. 運用コストの違い
  5. 室内空気の汚染度の違い
  6. 耐用年数の違い

これら6項目を比較した結果をまとめたのが下記となります。

  床暖房 エアコン
熱を伝える方法
暖まるスピード
初期コスト ×
運用コスト
室内空気の汚染度
耐用年数

どうしてこのような比較結果になったのかを、次章から詳しく紹介していきたいと思います。

熱を伝える方法の違い

熱の伝わり方には、「伝導」「対流」「輻射(ふくしゃ)」の3種類があり、床暖房は遠赤外線を利用した「輻射」による暖房方法であることが大きな特徴です。

  • 伝導:物質が熱を伝える
  • 対流:液体や空気(流体)が熱を伝える
  • 輻射:電磁波が熱を伝える

床暖房の熱は「輻射」によって空間を移動するため、足元だけでなく部屋全体をムラなく暖めます。室内のどこにいても同様の心地よさを感じられことが「輻射」による暖房の効果で、床暖房の快適性が高い理由はこの点にあるといえるでしょう。

一方のエアコンは「対流」による暖房方法になります。

おもに頭上から温風を吹き出し、室内の空気を「対流」させて部屋全体を暖めます。しかし暖かい空気は軽く上昇する性質があるため、足元は暖まりにくいなど温度ムラが発生しやすいことが特徴でもあります。

快適性を高めるには、効率よく循環させ室内の温度ムラを解消する工夫が必要となるでしょう。

暖まるスピードの違い

床暖房は、起動から適温になるまで一定の時間が必要です。起動する時間が決まっている場合は、あらかじめタイマー設定をしておくなど対策をしておくとよいでしょう。

エアコンは、起動するとすぐに温風を吹き出しますが、暖かい空気は上昇してしまうため、適温と感じるまで一定の時間が必要です。また素早く部屋を暖めるには、起動当初は温度設定を上げる必要があります。

初期コストの違い

床暖房を導入する場合、専門的な工事が必要です。そのため材料コストと工事業者による施工コストがかかるため、初期コストは高くなってしまいます。ただし、床暖房の種類や施工方法によってコストは大きく変わります。導入前には、コストダウンを図るためにも十分な検討が必要になるでしょう。

エアコンの初期コストは、床暖房と同様に材料コストと施工コストがかかることから暖房機器のなかでは比較的高くなります。しかし大規模な工事にはならないため、床暖房よりコストを抑えた導入が可能です。また壁に穴を開ける必要がある場合など、設置環境によっては追加コストがかかることもあります。

運用コストの違い

床暖房の運用コストは、おもに光熱費は高くなってしまう傾向にありますが、基本的にメンテナンスコストが必要ありません。ただし温水式床暖房の場合、エネルギーを供給する熱源設備のメンテナンスや交換が必要になります。なお光熱費は、種類や設定によってはエアコンよりも安くなることもあります。

近年ではエアコンも技術進歩によって省エネ化が進み、他の暖房機器と比較しても安い光熱費で使用できます。ただし、まだまだ他の暖房器具と比べて電気料金が高くなる傾向にあります。

室内空気の汚染度の違い

床暖房は、燃焼系暖房機器のように空気を汚染するような物質を発生させることはありません。

一方のエアコンも燃焼系暖房機器のように空気を汚染するような物質を発生させることはありません。

ただし、内部でカビが発生している場合などは、作動すると温風といっしょにカビ菌を吹き出すことになります。また対流によって、ほこりやダニなど室内のハウスダストを舞い上げるため、吸い込みやすくなりアレルギーの原因になることもあります。

耐用年数の違い

床暖房の耐用年数はおおよそ30年以上とされており、実質、建物の耐久性と同等と考えられます。ただし温水式床暖房の場合、熱源設備の耐用年数は10~15年となるため、寿命を迎えたら修理か交換が必要となります。

エアコンの耐用年数はおおよそ10年程度とされており、寿命を迎えたら修理か交換が必要となります。また、毎年エアコンのクリーニングやメンテナンスが必要となるので、さらに耐用年数が下がることも。

長期的な視点で見るとエアコンは床暖房の代わりにはなりにくい

対流によって熱が上に逃げる様子

ここまで、床暖房とエアコンを比較してきました。

エアコンは施工も比較的簡単で手軽に導入できるうえ、光熱費も安く利用できるなど非常に優れた暖房方法といえるでしょう。しかし床暖房の大きな特徴でもある快適性に高さという点では、エアコンにそれほど大きな期待はできません。

というのも、エアコンの熱の伝え方が対流によるものであるため、室内の温度ムラが発生しやすいということがその理由です。とくに足元が冷えやすく室内温度を高めに設定してしまいがちで、暖房効果という点では床暖房と比較しても物足りない部分といえるでしょう。

理想的な暖房方法として「頭寒足熱」という考え方があります。「頭寒足熱」とは、足元を暖め頭は冷やすことですが、この環境にあると血行を促進しながら体を暖められる効率のよい暖房方法になります。

床暖房はまさに「頭寒足熱」を実現する理想的な暖房方法ですが、一方でエアコンはその逆「頭熱足寒」になりやすいのです。したがってエアコンに床暖房と同様の快適性を期待することは難しく、エアコンを利用する場合は特徴をいかした使い方をすることが必要になるでしょう。

床暖房とエアコンを併用して使う際のポイント

リビング

床暖房とエアコンを併用するなら、暖房効率を高める工夫が必要になるでしょう。例えば、床暖房は立ち上がりがエアコンに比べてやや遅いので、部屋が温まるまではエアコンをつけておくといった併用方法です。

対流による暖房方法の特徴として、暖かい空気は天井付近にたまり、逆に冷えた空気は足元にたまります。サーキュレーターなどを活用し、室内の空気をうまく循環させることで改善することも可能です。

ただし理想的な暖房方法「頭寒足熱」を実現するなら、床暖房を導入して効率よく体を暖めることが効果的です。この場合、床暖房を起動して適温に到達するまでの時間を、エアコンと併用することで、より効率的に部屋を暖めることができるでしょう。

まとめ

エアコンは、床暖房と比較すると導入コストも運用コストも安くなるなど、コストパフォーマンスに優れた優秀な暖房機器といえます。

快適な空間づくりという点では、輻射熱で部屋全体を暖める床暖房のほうが優位にあります。またエアコンと床暖房を併用してうまく利用することも、生活の質を高めるうえでも効果的と言えます。