温水式床暖房とは?温め方の仕組みやメリット・デメリットを紹介

床暖房を選ぶ際に「温水式床暖房」をまず最初の選択肢に入れる人も多いでしょう。そんな中で、次のような疑問を感じている人もいらっしゃいます。

  • 温水式床暖房の初期費用はどうなっているのか?
  • ランニングコストは高い?安い?
  • 温水式床暖房のメリットやデメリットを知りたい
  • 温水式床暖房の安全性は?

そこで今回の記事では、温水式床暖房とはどんな暖房器具なのか、メリットやデメリットについてわかりやすく解説していきます。これから床暖房の設置を考えている人の参考になれば幸いです。

温水式床暖房とは?

温水式床暖房とは床暖房の一種で、現在日本の住宅の多くの床暖房として採用されている暖房器具。名前の通り温水を使って床を温めます。

温度ムラが少なくランニングコストも他の床暖房より安くなる傾向があり、部屋全体を温める暖房器具として人気です。

温め方の仕組み

温水式床暖房の仕組みはシンプルです。

フローリングなど床仕上げ材の下層に床暖房用の温水パネルを敷設し、それを温めます。温水パネルは、おもに温水が通過するパイプや断熱材などを組み合わせたものになり、また温水パイプは床面の温度にムラが生じないよう全体にまんべんなく配置されています。

そしてガスや電気、灯油などでつくられたお湯が温水パネルに供給されることで床全体を循環し、床仕上げ材を加熱する方法が床暖房のおもな仕組みです。

温水式床暖房の種類と特徴

温水式床暖房は、床仕上げ材の下層に敷いた温水パネルの内部にお湯を循環させる暖房方法。そして、お湯をつくるエネルギーの供給元となる「熱源」の違いでいくつかの種類に分けられます。

床暖房の「熱源」となるのはおもに以下4つです。

  • 電気
  • ガス
  • 石油(灯油)

温水式床暖房はこれら「熱源」の違いによって分類できますが、さらにこれら「熱源」を使用してお湯をつくる設備にも多くの種類があります。温水式床暖房の稼働に必要となるおもな熱源設備をまとめたのが下記となります。

温水式床暖房の熱源 熱源設備
電気 ヒートポンプ式熱源機
多機能型エコキュート
ガス 暖房専用熱源機(ガス用)
温水暖房付給湯器(ガス用)
エコウィル
エネファーム
灯油 暖房専用熱源機(灯油用)
温水暖房付給湯器(灯油用)

熱源として最も多く使われているのが「ガス」で、この熱源に対応した温水式床暖房製品が多くなっています。

温水式床暖房4つのメリット

メリット

温水式床暖房の他の床暖房とは違う大きなメリットは、以下の4つです。

  • 立ち上がりの時間が早い
  • 床面の温度にムラがない
  • ランニングコストが安い
  • 閉塞面の温度上昇がない

立ち上がりのスピードが早い

リンナイ床ほっとの立ち上がりの早さ

温水式床暖房は、電気式床暖房と比較して立ち上がりの時間が早い傾向にあります。起動から適温になるまでの時間が短いことは、快適さの追求と同時にエネルギーの無駄を削減する意味でも効果的といえるでしょう。

参考までに、リンナイの温水式床暖房「床ほっと」では、表面温度が20度になるまで約45分と従来のガス温水式床暖房と比べると15分ほど早くなっています。また、電気ヒーター式床暖房と比較すると立ち上がりの早さは5時間近く差がついています。(電気ヒーター式床暖房でも立ち上がりが早い製品があります。)

このように、温水式床暖房は他の床暖房と比べると比較的立ち上がりが早いのがメリットです。

床面の温度にムラがない

温水式床暖房の温水パネルには、お湯が通過する温水パイプが高密度に配置されています。さらに温水パネルには、床仕上げ材との接地面に対してアルミの均熱板を全面に貼り付けているため、温度ムラをなくしています。

温度ムラがないことで部屋全体を温めることができ、床に座ったとき冷たい部分と温かい部分がまばらにならないのがメリットです。

ランニングコストが安い

温水式床暖房のランニングコストは、熱源の種類や契約プランによって変動しますが電気式床暖房よりも安くなる傾向にあります。ただし電気式床暖房も種類や設定によって大幅にランニングコストの削減を実現できる場合も。

この辺りはリフォーム店や工務店が取り扱う床暖房によって、大きくランニングコストが変わります。あくまでも一般的には温水式床暖房のランニングコストが優れていると言われているだけなので、色々な床暖房のランニングコスト目安をチェックすることをおすすめします。

閉塞面の温度上昇がないので低温やけどを起こしにくい

閉塞面とは、床面に人やものが接している面のことを言います。

床暖房の種類によっては、暖房運転中に閉塞面が温度上昇することがあります。閉塞温度が高い状態が継続していると、場合によっては低温やけどを負うケースもあるため注意が必要です。

温水式床暖房の場合は、温水が循環して熱が集中することがなく閉塞温度の上昇もほとんど起きることがありません。そのため、一般的に低温やけどを起こしにくいとされています。

温水式床暖房5つのデメリット

デメリット

メリットとは逆にデメリットも当然ながらあります。温水式床暖房特有のデメリットは、以下5つです。

  • 初期コストが高い
  • 熱源設備の劣化や故障がある
  • 水漏れの可能性がある
  • 不凍液の交換が必要
  • リフォームに不向き

初期コストが高い

温水式床暖房は、電気式床暖房と比較して初期コストが高くなります。設置に必要な材料や設備、施工費など比較的規模が大きくなるため、導入に際しては予算を考慮する必要があるでしょう。

特に高くなるのが「熱源設備」です。製品によっては熱源設備だけで50万円を超える場合があるので、選ぶ際は注意してください。

熱源設備の故障や劣化がある

温水式床暖房の寿命は30年以上と非常に長く、導入した後は基本的に劣化の心配をする必要はありません。しかし熱源設備は劣化や故障することもあり、その場合は修理や交換などの処置が必要となりメンテナンスコストがかかります。

熱源設備の寿命は種類によって異なりますが、平均して10~15年程度と言われています。したがって定期的な熱源設備のメンテナンスや交換を考慮しておく必要があるでしょう。

水漏れの可能性がある

万が一温水パネルのパイプが破損することがあると、そこから水漏れを起こす場合があります。

水漏れは床暖房だけでなく、建物を傷めることになるため危険な現象です。例えばフローリングの補修をする場合でも、釘などを打つことは水漏れにつながるため絶対にやってはいけない行為です。

ただし温水パイプは「架橋ポリエチレン管」という非常に耐久性の高い素材を使用していることから物理的に大きな衝撃が加わらない限り破損することはまずありません。

不凍液の交換が必要

温水式床暖房の温水パネルには不凍液が使用されています。不凍液とは、寒冷地で凍結しないようにすることと、パイプ内や熱源設備内でカビや腐食などの発生を防ぐ役割があります。

およそ2~3年を目安として不凍液の交換メンテナンスが必要です。床暖房には基本的にお手入れは不要ですが、この不凍液交換作業だけは必要なメンテナンス作業となり、手間がかかるデメリットがあります。

リフォームに不向き

温水式床暖房はリフォームで後から設置する工事に不向きです。

なぜなら、温水式床暖房は厚みがあるため種類によってはドアと干渉してしまう可能性が高いからです。また、フローリングを剥がして温水パネルを敷き詰める必要もあり、リフォーム費用が膨らみがちになるデメリットもあります。

逆にリフォームに向いている床暖房は「電気式床暖房」です。

電気式床暖房はカーボンフィルム等の非常に薄いパネルを使っているため、リフォーム時に設置したとしてもドアなどと干渉しにくいのが特徴。

基本的に温水式床暖房を設置するのであれば、新築時に導入することをおすすめします。

まとめ

ここまで、温水式床暖房について徹底的に紹介してきました。

温水式床暖房を導入する場合は、熱源設備を検討することもポイントとなります。メリットとデメリットを考慮したうえで、マイホームの住環境に適しているか判断することが重要となります。

当社の考えでは、新築で導入するのなら温水式床暖房、リフォームで後から設置するなら電気式床暖房をおすすめします。それぞれの特徴を踏まえた上で、最適な床暖房を選びましょう。